チェンバロほど、短期間で楽器の認知度や知識(製作家・演奏家共)が大きく変わった楽器は珍しいんじゃないかと思うのです。
20世紀初頭前後のチェンバロ復興期に複数のメーカーが研究を重ね、たくさんの試行錯誤の末に登場したのが、今で言うところのモダン・チェンバロ。
それから1世紀、ヒストリカル・チェンバロの再評価、製作家・演奏家・音楽学者の急激な増加、ヒストリカルの隆盛とモダンの衰退。
チェンバロ、そして「古楽」を取り巻く世界はどんどん変わっていきました。
ヒストリカルの素晴らしい楽器が、本場ヨーロッパはもちろん、日本でも次々と製作され、演奏家や愛好家の手に広く行き渡り、行き場を失ったチェンバロ復興初期の楽器たちはあっという間に表舞台から姿を消しました。
たしかに時代遅れかもしれない。
でも、その時代においてはそれが最先端だった。
モダンにはモダンの良さ、面白さがあるんですよね。
モダン隆盛期に、たくさんの作曲家がこの「新しい」楽器に魅力を感じて曲を書きましたが、それらはやはりヒストリカルで弾いても魅力を出し切れないように思います。
チェンバロ復興から怒涛の1世紀が過ぎ、いろいろな余裕を持って立ち返ることができる今、また新しいアプローチがあるんじゃないかなぁ。
(その辺りに焦点を当てる今年のチェンバロの日!、オススメです♪)
モダン・チェンバロといえば、よく知られているのはノイペルト、日本だとトーカイ・スピネットなど。
まだ現役の楽器も多くて、私もたびたび弾く機会がありますし、特にトーカイの楽器は本当に多く生産され販売されたので、今では中古市場にもよく出回っています。
そんななか思わぬところで出会ったのが、今は姿を消したドイツのメーカー、シュペアハーケのスピネット。
約半世紀前のこのような楽器がはるばる日本に渡ってきて長く使われ、大修理を経てまた息を吹き返し、縁あって私が触れることができた、ささやかな素敵な機会でした。
さて、明日から松山です!
23日(木)夜に松山市民会館でのコンサートに出ますので、もしお近くの方いらっしゃいましたら是非♪